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報道新聞掲載|沖縄県難聴福祉を考える会

琉球大学教授 野田 寛

1999年(平成11年)9月15日沖縄タイムス掲載

補聴器は調整が必要

早いか遅いか個人差があるものの、年とともに聴えも衰えて、七十歳以上で約半数の人が九十歳以上で殆どの人が、補聴器を必要とするほどになる。
 ご本人も周囲の人達も会話に不自由しだしたら、敬老の日(九月十五日)などにプレゼントするのは実にほほえましく、お年寄りを大切にする沖縄だけによく耳にする。
 しかし、ご本人抜きで買われているのが殆どで、ご本人の聴え方に合わせていないため役立たず、箪笥に眠っているのが多い。
 一人ひとり聴え方が異なり、その聴えに補聴器の周波数特性(どの高さの音をどのくらいカバーするか測定できる)を適合・調整しなければ、どんな高価な補聴器も役に立たない。近年、デジタルとかコンピューター調整とか、いかにも良いように宣伝されているが、補聴器を適合・調整する基本に変わりはない。
 デジタルは音の入り口と出口がデジタルで、中身は従来のものと殆ど変わらない。  コンピューター調整とは、聴力検査で得られた値(聴覚レベル)を補聴器の単位(音圧レベル)にコンピューターで換算・適合させるだけで、合わせる人の手間が省けるだけのことである。(この補聴器の単位―音圧レベル―で聴えを測定すると、直接適合させられ、図面上で目で確かめられる。琉大耳鼻科グループは、この方法を採用している)
 理論的にはこれで良いのだが、実際はこうはいかない。補聴器が必要なほど聴えが悪くなると、殆どが内耳障害が加わっている。内耳の音を感ずる細胞が障害されると、音の大きくなり方や濁り方が変わってきており(音の“ひずみ”)、言葉の理解度などが変わってくる。
 人間の耳には約三万の聴覚細胞がある。これが障害され、それぞれの細胞が“ひずみ”を起こしてくると、これは測定はできずその人の感覚ということになる。
 従って、補聴器適合には理論で合わせると同時に、貸し出しにより、この“ひずみ”や環境音による調整が必要となってくる。

このように、補聴器は黙って買って贈るものではなく、また本人を同伴しても、その場で購入するものでもない。貸し出し補聴器により自分の生活の場で使用して、調整して、確かめてから購入するものである。
 特に耳の中に入れる挿耳型補聴器は小さいだけに調整機能は殆どない。箱型や耳掛型の貸し出し補聴器により、どの周波数特性が一番聞きやすいかを確認し、この周波数特性を組み込まないと、買ったけど使えないということになる。
 できてきたものを自分で聴いて確かめるだけでなく、この特性を測定してチェックできる施設を通して購入するとよい。
 幸いにして、沖縄では無料相談として琉大耳鼻科のボランティア活動の「沖縄補聴相談センター」を中心に、六市町村の社会福祉協議会で、保険診療として琉大を中心に十二病院・診療所で相談に対応している。
 そう安くない補聴器、本当に喜ばれ、使われるようにして贈りたいものである。