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報道新聞掲載|沖縄県難聴福祉を考える会

琉球大学教授 野田 寛

2001年(平成13年)5月9日琉球新報掲載

「聴こうとする意欲」重要に 
ー人工内耳で従来の聴力を獲得 手話・要約筆記と補聴器の役割ー

高齢化社会に突入し、難聴高齢者が急増していると感じている人が徐々に増えている。 しかし、「難聴」というと、一般に、特に福祉関係者はすぐ、「手話」「要約筆記」の対応を考え、もう手話通訳者や要約筆記サークルが育ってきているので、対応は十分と考えているようだが、果たしてそうだろうか。  七十歳以上で約半数が、九十際以上で殆どが補聴器を必要とするほどに聴えが衰える。これら難聴者は全国で六百〜七百万人、当県で七―八万人と推定される。厚生労働省のいう難聴者六十〜七十万人(当県四〜五千人)は聴覚障害による身体障害者の認定数で全難聴者の十〜十五%にすぎない(人の聴え始めを0dB(デシベル)とした時、30デシベルまでは正常範囲内、50dB前後より補聴器が必要で、70dB以上で身体障害者に認定される)。
 これら身体障害者の中で、補聴器でも言葉が理解できない人(平均聴力100dB以上の身体障害者2級)は、先天性聾を含め約十万人(当県で二千人弱)で、これらの人には手話・要約筆記が必要で、それ以外の難聴者の殆どは良く適合した補聴器で言葉が理解出来る。

 しかし、この補聴器が我が国に先進国中唯一適合制度がないため、規制のないまま商売として乱売され、補聴器の信用が失われ、必要な人の五〜十人に一人と殆ど使われていない。この改善のアピールに呼応して、県内でもかなりの地域で関心が高まり、具体的な対応を始める地域が増えていることは心強い。

近年、人工内耳が普及してきて、言葉を話せる人が聾になっても、人工内耳で半数以上が電話で話せるくらいにできるようになった。
 当地の風疹児(すでに成人)を含め、言葉を持っていない先天性聾成人は、人工内耳を入れても成功しないことが多い。音は聴かせられるが、もともと言葉を持っていないと、言語教育に数年を要し、これを希望しない人が殆どで、これらの人のために手話は必要である。
 しかし、先天性聾または言語獲得前の幼少児期に失聴した小児に、四歳までに人工内耳を入れられれば、小学校入学時には、健聴児と区別がつかないくらい話せるようになるので、県内でも手術を受ける幼児が徐々に増えて、言語教育も充実してきている。

 補聴器で言葉の理解が不十分になってきた時は、言葉の聴き取り訓練により改善させられるが、それでも不十分のときに人工内耳の適応となる(費用数百万円は育成医療・厚生医療により、原則的に自己負担はないー平成18年4月より、身体障害者自立支援法により、原則1割負担となっているー)。  これら人工内耳適応者には、前述の聴き取り訓練が術前のトレーニングになる。従来の聴えと人工内耳での聴えとは初めは少し異なるが、そのすり合わせのトレーニングにより、個人差はあるが、数週間から数ヶ月で以前と同じように聴えるようになる。このように従来の聴えを獲得するには「聴こうとする意欲」がないとうまくいかないこともあり、従って手話や要約筆記で「聴かなくて良い」習慣がつかないよう指導する時代に変ってきている。